解説!鮎川いずみさん
izumi ayukawa explain

 1967年10月、映画「また逢う日まで 恋人の泉」(ビクター=松竹)にて芸名“鮎川いづみ”でデビュー。主演は三田明さんと竹脇無我さん。鮎川さんはこの二人の相手役として映画初出演にしてヒロインに抜擢された。この作品での役柄はお手伝いさんで主人公の二人に一目ぼれされていた。出演者は早瀬久美さん、砂塚秀夫さん、和崎俊哉さん、藤岡弘さん、尾崎奈々さん。
 1968年2月、テレビで評判になる前に早速、映画「恋人と呼んでみたい」(ビクター=セントラル・アーティスツ・プロ )に出演。主演、永井秀和さん。この映画でも鮎川さんは1作目同様ヒロイン役で、同じ学校の男の子二人に好かれている役。出演者は、山川ワタルさん、長浜鉄平さん、杉良太郎さん。
 1968年4月、「宝くじ」のイメージガールである“幸運の女神”「ミス宝くじ」に選ばれ、1969年3月までの1年間、その役目をはたす。ちなみに鮎川さんの前の“幸運の女神”は柏木由紀子(坂本九夫人)さん、後は北條みきさん。
 そして1968年11月から約1年間、NHK「開化探偵帳」に初のレギュラー出演。主演に緒形拳さん。この主人公に惚れてる娘、お金として出演。出演者は川崎敬三さん、小山田宗徳さん、香山美子さん。このお金をきっかけに、鮎川さんは清楚なイメージが買われ、この後テレビにいろいろ出演していく。この番組の舞台は明治時代初期で、格好が時代劇とほぼ近い。しかしまだ当分は現代劇も多数出演していた。



 1970年代前半、レギュラー出演作は意外と現代劇が多い。しかしゲスト出演作は時代劇の割合が多く、この頃から“時代劇女優”のイメージがそこそこあった。特に、現在でも続いているTBS系のナショナル劇場「水戸黄門」には第1部からゲスト出演しており、この作品では「ゲスト出演回数の多い女優、ベスト3」入りをするほど(第22部までの集計)。「水戸黄門」には計13回、ゲスト出演していた。
 1973年9月、そのTBS系ナショナル劇場「江戸を斬る」シリーズの第1作目、「江戸を斬る 梓右近隠密帳」にて踊り子お艶役として、ナショナル時代劇内では初のレギュラー出演をした。主演は竹脇無我さん。右近に惚れてる部分もある役だったが、他にも先に右近に惚れてる小夜(榊原るみ)がいたため、その小夜と火花を散らすシーンもあった。出演者は、榊原るみさん、松山英太郎さん、松山省二(現、松山政路)さん、大阪志郎さん、成田三樹夫さん、片岡千恵蔵さん(特別出演)。「江戸を斬る」というと西郷輝彦さん主演の「遠山金四郎」が主役の作品が有名だが、1作目はこれとは全く異なる作品であった。その西郷版「江戸を斬る」は第2シリーズから第6シリーズで、鮎川さんもその5作品中3回ゲスト出演している。
 1970年代後半ともなるとレギュラー、ゲスト出演作共に時代劇への出演が集中してくる。
 鮎川さん出演の必殺シリーズといえば、「必殺仕事人」シリーズの何でも屋の加代だが、レギュラー出演する前に、「必殺仕置人」、「助け人走る」、「必殺からくり人 血風編」、「新必殺仕置人」、「新必殺からくり人」の計5本に被害者役としてゲスト出演。そして1978年2月、朝日放送(現表示、ABC)系「江戸プロフェッショナル 必殺商売人」にて鮎川さんとしては必殺シリーズ初のレギュラー出演をした。役柄は根津の花街で喜捨を乞いながら、身寄りのない子供達の面倒を見る尼僧、秀英尼役。特に正八(火野正平)との共演が多かった。このあたりから“清楚なイメージ”な鮎川さんからちょっとずつイメージが変化してる感があるが、まだこの頃の、特にゲスト出演作は“薄幸な女性”キャラを演じることが多かった。秀英尼は登場する度、「御報謝を・・・」と人々から収益金を集めていて、それは恵まれない人々へのためと、自分の生活費のために集めていた。そのため後の「仕事人」シリーズの加代が尼姿になると、必殺ファンの間では「御報謝を・・・」の一言が欲しかったと言われている。主演は藤田まことさん。出演者は梅宮辰夫さん、草笛光子さん、火野正平さん。
 その次の年の1979年12月、「商売人」から1つシリーズを飛ばして「翔べ!必殺うらごろし」に出演。この作品の場合も、レギュラーではあるがまだ殺し屋メンバー役ではなく、それに関わる脇役。役柄は、「熊野権現の札」を売り歩いている自称流れ巫女のおねむ役。まだこの頃の鮎川さんにしては珍しい役柄で、登場場面大半が寝てるか食べてるかのシーンばかり。いつでもボーッとしてるというイメージのキャラクターだった。主演は中村敦夫さん。出演者は市原悦子さん、和田アキ子さん、火野正平さん。
 前に書いた通り、70年代までのゲスト出演作で、鮎川さんは基本的に“儚く薄幸な女性”キャラが多いが、キリッとした顔をしている女優さんなのにとてもよく映えている。被害者役が多く悪女役というものは全然と言っていい程ないが、しかしただ一つ1980年に、東京12チャンネル(現、テレビ東京)系「斬り捨て御免!」にて悪女役としてゲスト出演している。被害者役が大半である彼女にしては珍しい役である。
 1979年あたりで鮎川さんは会社を設立する(現在の鮎川さんの会社)。



 すでに「翔べ!必殺うらごろし」の次回作、「必殺仕事人」が1979年の5月に放送されており、初めは主演として藤田まことさん、出演者として伊吹吾郎(現、伊吹吾朗)さん、三田村邦彦さん、山田隆夫さん、中村雁次郎さん(2代目)のメンバーだったが、「仕事人」の放送を最後に必殺シリーズの放送が打ち切られるはずだったのが秀(三田村邦彦)人気がきっかけに人気が上がり、放送延長が決定。1979年12月、つまり「必殺仕事人」29話から、藤田さん、伊吹さん、三田村さんの3大レギュラーを残しメインレギュラーが変更。その中に初めて鮎川さん扮する加代が登場する。しかしこの頃の加代は世間一般で知られている「何でも屋の加代」ではなく、真面目な、娘のようなキャラクターであった。今回の役柄は“仕事人”メンバーで情報を探ったり集めたり、新たな元締、六蔵(木村功)との繋ぎを勤める情報係。ちなみに「仕事人」での加代は同じ情報係の相棒であるおしま(三島ゆり子)と、質屋“上総屋”を営む。裏では加代が動き回る役目をしているため、表稼業である質屋はおしまが主になって経営している。この後、「必殺仕事人」シリーズには「必殺仕事人V激闘編」まで必ず出演している。レギュラー変更してからの新たな出演者は、木村功さん、三島ゆり子さん。ちなみに木村さんが出演する前の元締役は山田五十鈴さんだった。
 その「必殺仕事人」にレギュラー出演してまもなくの、1980年1月、芸名を“鮎川いづみ”から“鮎川いずみ”に変更。“いずみ”名義としては「必殺仕事人」33話が初めての出演番組である。
  1981年5月、新たな「仕事人」シリーズである「新必殺仕事人」の放送が開始。「仕事人」シリーズの基本レギュラーが定まったのがこの作品で、鮎川さんの演じる有名な「何でも屋の加代」はこのシリーズからである。実際、加代が「何でも屋」を開業したのは3話(資料では8話になってるが、加代の家の前にはすでに3話から「よろず引き受けます」の看板がかかっていた。しかし本格的に「何でも屋」稼業をしている加代を見るのは確かに8話からである)で、それまでは決まった表稼業を持っていなかった。加代の「がめつくて枠のあるキャラ」は「新仕事人」からではあるが、前半まではまだそのキャラクターが完全には定まっておらず、鮎川さんもどういう性格にしようかといろいろ試しながら苦労していたようである。つまり、鮎川さんの過去に演じてきたキャラクターは清楚なイメージや、か弱いイメージ、お姫様のようなキャラクターが大半でその分この「加代」は意気込みがあったらしく、一生懸命工夫していたらしい。後半になってくるとだんだんキャラクターの性格が定まり、それが大当たりすることになり、「必殺仕事人」シリーズは彼女の代表作となる。主演は藤田まことさん、出演者は三田村邦彦さん、中条きよしさん、山田五十鈴さん。
 「新仕事人」の加代が、「儚い」キャラのイメージからの変化だったのか「仕事人」シリーズ以降(鮎川さんは82年までは単発やゲスト出演もしていたが、83年から87年9月までレギュラー番組への出演のみしている)からゲスト出演作でのキャラのイメージもがらりと変わった。
 1982年10月、「必殺仕事人III」放送開始。この作品は「新仕事人」メンバーに西順之助(ひかる一平)が加わった。「何でも屋の加代」の性格の完全体がこの作品からで、鮎川さんも「新仕事人」の時よりギャグを取り入れ、大っぴらな演技をするようになった。必殺シリーズの中で一番の最高視聴率を取ったのがこの作品。主演は藤田まことさん。出演者は三田村邦彦さん、中条きよしさん、ひかる一平さん、山田五十鈴さん。
 この「仕事人III」の主題歌を鮎川さんが担当することになり、1982年11月、鮎川さんにとって初のレコードを販売。必殺人気もあるのか「冬の花」が必殺シリーズ久々のヒット。レコードの売り上げは10万枚で、その年の有線大賞新人賞を受賞する。レコーディングについてだが、その時プレッシャーと舞台出演のために声がおかしいまま臨んだらしいが、それが作曲者の平尾昌晃さんに絶賛されたという裏話が資料にあった。
 1983年10月、「必殺仕事人IV」放送開始。「仕事人III」とレギュラーは同じで、脇役に順之助を追い回すオカマ、玉助(梅津栄)が登場する。「仕事人IV」が本格的な「仕事人」ブームの頃で、この頃、映画「必殺!-The hissatsu-」(松竹=朝日放送)も制作、上映された。鮎川さんも「仕事人III」あたりからこの必殺シリーズでの仕事が忙しかったのか、前にも書いた通り必殺の出演と単発の「京都殺人案内」以外、ドラマや時代劇へのテレビ出演はしなくなってしまう。この「仕事人IV」の主題歌も「III」と続いて鮎川さんが担当。2度目のレコード販売をする。曲名は「花の涙」。
 1985年1月には「必殺仕事人V」が開始。秀(三田村邦彦)&勇次(中条きよし)コンビに変わって、竜(京本政樹)&政(村上弘明)コンビがレギュラー入り。鮎川さん扮する加代も相変わらずだが、この作品にて政と同居している。政が1階で花屋、加代が2階で何でも屋を営む。あまり話題にならないが、「V」での政と加代が密かに“仲がいい”ようなそぶりが何個か見える。主演は藤田まことさん、出演者は京本政樹さん、村上弘明さん、ひかる一平さん、山田五十鈴さん。
 1985年11月、「必殺仕事人V激闘編」が開始。鮎川さんの最後の必殺シリーズレギュラー作である。「III」、「IV」、「V」と、お馴染みなキャラクターだった鮎川さん扮する加代も、相変わらずではあるがハード路線を目指したこの「激闘編」では少し締まったキャラとなった。「激闘編」では仕事人に闇の組織「闇の会」というものがあり、加代はその「闇の会」に出向いて仕事を取ってくる役割があった。その他に、“はぐれ仕事人”の登場も「激闘編」の見所。この「激闘編」にてまた主題歌担当。3回目のレコードを販売。曲名は「女は海」。主演は藤田まことさん、出演者は京本政樹さん、村上弘明さん、柴俊夫さん、梅沢富美男さん、笑福亭鶴瓶さん。
 1987年1月、再びTBS系のナショナル劇場「江戸を斬る」(第7シリーズ)に、お仙役としてレギュラー出演。西郷版「江戸を斬る」のねずみ小僧次郎吉のような役回りで、元女盗賊で主人公、遠山金四郎(里見浩太郎)に協力する役だった。この頃の鮎川さんは「何でも屋の加代」のイメージが定着しており、お仙のような“まともな性格で強い役”というのはちょっと珍しかった。しかし“強い役”というのはこの先何個か演じている。主演は、里見浩太郎さん、出演、松山英太郎さん、森田健作さん、太川陽介さん、有森也美さん、大沢逸美さん、高橋元太郎さん、谷幹一さん、藤岡琢也さん、若林豪さん、森繁久彌さん。
 同じ1987年、2月に久々の現代劇である、朝日放送系「ザ・ハングマン6」にアイリス/立花愛役でレギュラー出演。つまり「江戸を斬る」とのかけ持ちである。そのためか、話にもよるがどちらかというとこちらへの出番が少なかった。アイリスは「必殺仕事人」シリーズの何でも屋の加代のようなキャラクターで、よく喋る、がめつい性格なキャラクターであった。この「6」は、主人公、フラッシュ/矢吹良介役の名高達郎(現、名高達男)さんの不祥事のため途中で主人公が変更。突如、「6」が終了することになってしまう。出演、川野太郎さん、稲川淳二さん、梅宮辰夫さん。「6」終了後、主演を渡辺徹さんに変更し、「ハングマンGOGO」と題名も変更。メンバーは「6」のメンバーなので続けて鮎川さんもアイリス役で登場した。
 1987年、必殺シリーズもテレビシリーズが9月に終了し、10月から年に3回のスペシャル形式になる。その10月のスペシャル「大老殺し」に、加代役でレギュラー出演することになる。この後1990年10月「仕事人VSオール江戸警察」まで連続出演する。しかし最初の頃はまだレギュラー出演するかどうか決まってなかったようだ。
 1989年5月、TBS系ナショナル劇場に3度目のレギュラー出演、「翔んでる!平賀源内」にお葉役で登場。役柄は平賀源内(西田敏行)の住むからくり長屋の変わった住人の一人で、実は源内に仕える紫頭巾という役だった。主演は西田敏行さん、出演者は薬丸裕英さん、池畑慎之介(ピーター)さん、石田ゆり子さん、松山英太郎さん、大沢逸美さん、森マリアさん、森繁久彌さん(特別出演)(1、2話)。



 「翔んでる!平賀源内」の後からレギュラー出演が減り、単発ドラマや時代劇への出演が増え、1992年6月、ゲスト出演としては長年ゲスト出演してきた「水戸黄門」第21部の12話、同年、同じくTBSナショナル劇場「大岡越前」第13部に第3話までレギュラーとして出演、それを最後にテレビから姿を消し、引退会見などは開かず女優を引退していった。



 女優を引退してからはその前から自分が経営している会社の仕事を本業にし、広告代理店の社長業やメディアプランナーを経て、現在、最近始めた化粧品事業(2005年現在)で活躍している。

 結婚については、1994年に二度目の結婚をしている(情報源、関西ローカル番組「週刊えみぃSHOW」の本人による発言)。(一度目の結婚については20代の時だと思われるがはっきりしていない)

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